バーチャルレストランとは、実店舗経営の飲食店がデリバリー専門店を開業する営業形態のことです。いつもの厨房を使って実店舗の定休日やアイドルタイム、営業時間ではない時間帯などを使って営業ができるため、より効率的な経営ができます。
既存の店舗運営の延長として挑戦でき、新しく人員を確保する必要がない点もバーチャルレストランのメリットです。本記事ではそんなバーチャルレストランの仕組みや開業方法を解説します。
バーチャルレストランとは?
バーチャルレストランとは、実店舗として営業している飲食店が異なる飲食店としてデリバリー業を並行して行う営業形態のこと。フードデリバリーアプリにしか存在しない飲食店ということで、バーチャルレストランという名前が付けられました。
例えば実店舗でイタリアンを営む飲食店が、副業的にピザ店やパスタ店をバーチャルに開業するのが、バーチャルレストランです。
ゴーストレストランやゴーストキッチン、クラウドキッチンなど類似ワードも複数存在し、まだ言葉の定義が混在している部分もありますが、ここではそれぞれの違いを整理してみましょう。
バーチャルレストランと出前の違い
バーチャルレストランも出前も、料理をお客さまにデリバリーするという点は共通しています。しかし出前が実店舗営業の延長線上で料理を配達しているのに対し、バーチャルレストランは実店舗とは異なる店舗としてデリバリーを行います。
また、出前の場合は実店舗の従業員が配達を行いますが、バーチャルレストランの場合はデリバリー代行サービスに配達を依頼するのが一般的です。
バーチャルレストランとゴーストレストランの違い
バーチャルレストランはあくまで実店舗をメインに経営している飲食店が展開するデリバリーの業態です。一方ゴーストレストランとは、デリバリーに特化した飲食店および、デリバリーで提供される料理を調理するためのキッチン施設を指します。
また、ゴーストレストランは実店舗を持たないため、キッチンもゴーストレストランに特化したキッチン施設を提供する会社と契約して調理場を確保しますが、バーチャルレストランは実店舗があるため使用するキッチンも自社のものになります。
バーチャルレストランとクラウドレストランの違い
クラウドレストランはゴーストレストランとほぼ同義で、デリバリーに特化した飲食店および、デリバリーで提供される料理を調理するためのキッチン施設を指しています。また、英語圏ではシェフとお客さんや、お客さん同士がオンラインでつながって行う食事会のことをクラウドレストランと呼ぶこともあります。
バーチャルレストランの仕組み(開業・注文・決済)
基本的な仕組みとして、バーチャルレストランでは、検索・注文・決済・レビューといった工程の全てがオンラインで行われます。ここでは、バーチャルレストランの仕組みを開業、注文、決済という3つのポイントにわけてみていきましょう。
バーチャルレストラン開業の仕組み
バーチャルレストランは1つの実店舗に対して複数のデリバリー専門店をオープンできます。
例えば実店舗が居酒屋なら、串焼き店や焼き魚定食屋など、さまざまな選択肢があります。キッチンも自社のキッチンを使えますので、空き時間を有効活用できるでしょう。
(もちろんゴーストレストラン施設を借りても構いません)
お店側は注文が入ったら調理をし、商品をデリバリーの容器に入れます。お客さまにデリバリーをするのはデリバリー代行サービスです。
バーチャルレストラン注文の仕組み
ユーザーはフードデリバリーアプリから注文を行います。決済方法はユーザー自らがアプリに登録し、注文の先に自動的に支払いが行われるため、店側で決済をする必要はありません。注文が入るとフードデリバリーアプリが飲食店に注文を流し、バーチャルレストラン側は注文に沿って調理を行います。
バーチャルレストラン決済の仕組み
決済方法はフードデリバリー代行サービスにより、クレジットカードやPayPal、現金などさまざまな方法が選べます。ユーザーが代金を支払うと、フードデリバリー業者から飲食店へ手数料を引いた売上金が振り込まれる仕組みです。
バーチャルレストランのメリット
バーチャルレストランには、運営スタイルや売り上げの安定性、初期費用などにおけるメリットがあります。ここでは、バーチャルレストランのメリットを3つ確認していきましょう。
複数ブランドの運営が可能となる
複数ブランドを同時に運営できる点もバーチャルレストランのメリットです。従来の実店舗型ビジネスでは、ブランドごとに店舗を構える必要があり、物件費や人件費、設備投資などのコストが多く発生していました。
一方でバーチャルレストランであれば、同じキッチン設備を使って、昼は「健康志向のサラダボウル専門店」、夜は「こだわりハンバーガー専門店」として営業できます。メニューや価格、ターゲット層の違うブランドを柔軟に試すことができ、市場の反応を見ながら改善・変更を加えることも容易です。
開業にあたり初期費用が抑えられる
従来の飲食店を開業する場合、店舗の賃貸契約、内装工事、客席の設計など、1000万円程度の初期投資が必要です。一方、バーチャルレストランは、店舗を構えずデリバリーやテイクアウトを中心に運営するため、客席や内装といった部分のコストが不要になります。
また、オンライン上で営業が完結するため、開業準備の期間が短縮されるというメリットも。バーチャルレストランは少ない資金で飲食店を開業したい方や、業態変更における市場テストを行いたい方などに最適です。
天候や立地による売上の波をなだらかにできる
天候によって売り上げが左右されてしまう点は、実店舗飲食店の大きな課題です。一方、バーチャルレストランは基本的にデリバリーを中心としたビジネスモデルであるため、売り上げが天候の影響を受けにくくなります。むしろ天候が悪く外出を控える人が増える状況でも、需要が高まるケースもあり、売上が安定しやすい特徴があります。
バーチャルレストランのデメリット
バーチャルレストランにはメリットがある一方で、メニュー開発や販促活動におけるデメリットも存在します。
ここでは、バーチャルレストランのデメリットを解説します。
デリバリーに特化したメニュー開発が必要
バーチャルレストランで提供するメニューは、デリバリーという特性を考慮して開発する必要があります。デリバリーでは、調理からお客様の手元に届くまでに20〜40分ほどの時間がかかり、その間に温度が下がったり、湿気で食感が失われたり、見た目が崩れたりするリスクがあります。
そのため、衣が長時間サクサク感を保てるように工夫した揚げ物、ソースを別添えにして味が混ざらないようにする盛り付け、温度差を考慮した容器選びなど、細部まで設計し直す必要があります。
デリバリー代行サービスへの手数料がかかる
バーチャルレストランは基本的に実店舗を持たず、デリバリー代行サービスを利用して注文や配達を行います。そのため、自社で配達スタッフを雇う必要がない一方で、これらのサービスに対して高額な手数料を支払わなければなりません。
一般的に、デリバリー代行サービスの手数料は売上の30〜35%前後に設定されていることが多く、さらに掲載料や決済手数料などが加わる場合もあります。
さらに、価格を上げて利益を確保しようとすると、他店との価格競争で不利になるリスクも。手数料の高さは単にコストの問題にとどまらず、価格設定やブランド戦略にも影響する課題といえます。
売上を上げるにはWebマーケティングの知識が必要
アプリやSNSを通じてのみ集客を行うため、オンライン上での見つけやすさ・印象づけ・リピート促進が成功の鍵になります。ユーザはデリバリーアプリを見ながら商品を選ぶため、目を引く料理画像の撮影方法やSEOなど、Webマーケティングの知識が欠かせません。
どのターゲット層に訴求するか、どの時間帯に広告を出すか、どの写真がクリック率を上げるかといった分析ができなければ、効率的に売上を伸ばすことは難しいといえます。
バーチャルレストランの始め方
バーチャルレストランの始め方は下記3ステップです。必要な資格は営業形態や提供する料理によって異なりますので、その都度確認しましょう。
- バーチャルレストラン開業に必要な資格を取る
- デリバリーメニューを考案する
- デリバリー代行サービスを探す
バーチャルレストラン開業に必要な資格を取る
「飲食店営業許可証」や「食品衛生責任者」など必要な資格を取得しましょう。すでに実店舗で取得しており判断があいまいな場合は管轄の保健所に相談すると安心です。
デリバリーメニューを考案する
キッチン施設がすでに整っている場合は、デリバリーメニューの考案に取り掛かりましょう。実店舗で出しているメニューとは異なるもの、かつ商圏のニーズに合ったメニューを考案する必要があります。
バーチャルレストランはフランチャイズとしても始めることが可能です。その場合はすでにメニューが用意されていますので、キッチン施設を活用してすぐにバーチャルレストランを始められます。
デリバリー代行サービスを探す
最後にデリバリー代行サービスを探しましょう。手数料だけで選ぶのではなく、総合的なポイントに目を向けることが大切です。また契約後は、デリバリーの配達員の方がすぐに受け取れるよう工夫してください。受け取りに時間がかかってしまうと料理が冷めてしまい、ユーザーのマイナス評価につながってしまいます。
違法?バーチャルレストランを開業する際の注意点
結論からお話しすると、必要な許可を取っていれば、バーチャルレストランは違法ではありません。違法性がないことがわかったところで、ここではバーチャルレストランを開業する際の注意点をみていきましょう。
WiFiは必須
注文や売り上げを管理するシステムやデバイスは、一般的にフードデリバリー代行サービスによって提供されます。そのためWiFi環境は必須です。
ターゲット層や商業圏を分析してから参入する
バーチャルレストランを開業する際は、市場調査を念入りに行うようにしましょう。キッチンからおよそ3kmのターゲット層や商業圏を分析し、どんな商品に需要があるのか、ライバル店はどれくらいいるのか、などを細かく調査してから参入してください。
デリバリー向けメニューの考案が重要
デリバリーの需要は流行を受けやすいため、メニュー考案は非常に難しいです。市場調査の質が売上に直結すると言っても過言ではありません。
儲かる?儲からない?バーチャルレストランを成功させるには
儲かるか儲からないかは商品とニーズがどれだけ合致したか、提供する料理がユーザーにどれだけ評価されたか、によって異なります。ただ、バーチャルレストランは開業費用が実店舗飲食店の10分の1程度であるため、儲かる可能性は十分あるといえるでしょう。
ここでは、バーチャルレストランを成功させるための3つのコツを解説します。
- アプリのレビューを念入りにチェックする
- 飲食店独自のWebサイトを立ち上げる
- デリバリーの容器選びに力を入れる
アプリのレビューを念入りにチェックする
バーチャルレストランの難しいところは、お客さまとの関係構築です。アプリで注文を受け、決済をし、デリバリー代行サービスによって配達されるため、お店側のスタッフはお客さまとの接点がありません。
そのためアプリのレビューは念入りにチェックするようにしてください。充分な数のレビューが得られなければ、レビューを書くとクーポンがもらえるといったキャンペーンを打つのもおすすめです。
飲食店独自のWebサイトを立ち上げる
独自Webサイトを立ち上げることで、お店に足を運んだことのないユーザーの目にも留まりやすくなります。メニューやお店のコンセプトをわかりやすく掲載することで、お客さまの安心感にもつながるでしょう。実店舗の顧客とは異なる層にアプローチできるチャンスですので、この機会を逃さないようにしてください。
SNSを使った集客も非常に大切です。デリバリー代行サービスのアプリだけでは多くのユーザーに認知してもらうことが難しいため、キーワードを盛り込んで積極的にSNSでアピールしていきましょう。Uber Eatsはインスタグラムと連携することもできますので、活用して注文率アップにつなげてください。
デリバリーの容器選びに力を入れる
容器選びも非常に重要です。料理の偏りや汁漏れが発生しない機能性だけでなく、高級感のある見た目も大切でしょう。デリバリー中の振動に耐えられるような耐性のある素材であることもポイント。また、温め直しができる素材だとユーザーの利便性が向上します。最後に、容器代の相場は商品原価の5%までです。容器のスペックと原価のバランスもしっかり押さえておきましょう。
バーチャルレストランに関するよくある質問
バーチャルレストランは自宅で開業できる?
バーチャルレストランを自宅で開業することは基本的に難しいといえます。多くの住宅用キッチンではシンクが1つしかなく、換気設備や手洗い場が基準を満たしていないため、「飲食店営業許可」の取得が難しいためです。バーチャルレストランを開業する場合は、複数のテナントが入居できるキッチン施設を利用することをおすすめします。
バーチャルレストランは違法ですか?
バーチャルレストラン自体は違法ではありません。ただし、営業許可を取得することなく料理を販売したり未許可の施設で調理をしたものを販売したりすると、食品衛生法違反の罪に問われます。その場合は、営業停止処分や罰金、最悪の場合は刑事罰が科されることもあります。
バーチャルレストランの注意点は?
バーチャルレストランを開業する際は、飲食店営業許可証や食品衛生責任者などの許可をきちんと取るようにしましょう。また、衛生管理・異物混入防止・温度管理の徹底をし、お客さまからのクレームを避けてください。
バーチャルレストランの開業において補助金は利用できますか?
バーチャルレストランの開業でも小規模事業者持続化補助金といった補助金を利用できる可能性があります。ただし、対象となる補助金の種類や条件は事業形態・所在地・設備投資の内容によって異なりますので、詳しくは各公式サイトをご確認ください。
バーチャルレストランをフランチャイズで始めることは可能ですか?
可能です。特に近年はフランチャイズとしてバーチャルレストランを開業するケースが増えており、本部のブランド力を活用しながら開業コストを抑えることができます。
まとめ
バーチャルレストランとは実店舗の飲食店がサイドビジネスとしてデリバリー専門店業務を行う営業形態のことです。あくまでも別店舗なので、実店舗と同じ商品は基本的に提供しません。
バーチャルレストランは現在の飲食店の延長線上で始められるというメリットがありますが、デリバリー代行サービスへの手数料や容器代など隠れコストもありますので注意しましょう。
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▶︎ クラウドキッチン「KitchenBASE(キッチンベース)」とは?
KitchenBASEは、デリバリーに特化した飲食店向けの業務用キッチンです。デリバリー専用の効率的な調理・梱包・配送が可能なレイアウトと設備が整っていますので、デリバリー専門店の調理やキッチンカーの仕込み、業態開発などさまざまな用途に活用できます。
施設は高田馬場や高円寺など、東京と大阪を中心に展開。独自データを基にデリバリーに最適な立地を厳選して展開していますので、初めてデリバリー専門の飲食店をオープンする方でも効率的な売り上げアップが期待できます。