年間約150件のオファーを受け、飲食店のあらゆる盛業支援を行うプロフェッショナル集団、サントリー株式会社グルメ開発部。「新たな食のインフラに挑戦する」を合言葉に、デリバリー専門のクラウドキッチンとして誕生したKitchenBASE。
人々のライフスタイルの変化とともに食事やアルコールを楽しむシーンも変わりつつあるのだろうか。今回はサントリー株式会社 営業推進本部 グルメ開発部 課長 渡邊様、ディレクター宮崎様、KitchenBASEを運営する株式会社SENTOEN 代表 山口大介、キッチン運営責任者/ブランド開発 武田玲佳の4人で食とアルコールの新たな可能性を探りました。
<参加者>
サントリー株式会社 営業推進本部 グルメ開発部 課長 渡邊様、ディレクター 宮崎様
KitchenBASE 代表:山口、キッチン運営責任者/ブランド開発:武田、PR:有村
■デリバリーとアルコール市場の変化
ーサントリー様とは2019年からお付き合いをさせていただいています。まずはKitchenBASEとご一緒させていただくことになった経緯を教えていただけますか?
渡邊:これまで当部署はオフラインで飲酒シーンや体験づくりを主たる業務としてきましたが、コロナ禍で大きくシーンが変化しました。そこでDX・デリバリーということに目を向け始めました。その中で「おもしろいことをやっている会社があるよ」と社内から声があり、すぐにお会いさせていただきました。
(サントリー株式会社グルメ開発部 渡邊様)
武田:弊社の直営ブランド「NY屋台メシ!!チキンオーバーライス」と一緒にサントリー様のお酒を販売させていただきました。サントリー様にペアリングのお酒を考えていただき、商品写真撮影にもご同席いただきました。
弊社は当時から酒販免許を取得して販売していたので、サントリー様のお酒もスムーズに販売することができました。実は酒販免許は取得に時間がかかり、新たにとると3ヶ月ほどかかります。
渡邊:そういった意味でも当時すでにそこまで進んでいる会社があることに驚きました。
ーアルコール市場やお客様の変化はどういったことがありますか?
渡邊:飲食店様向けをメインにビジネスを行なっていたため、コロナ禍では大きな影響を受けました。テレワークも浸透し、飲食・飲酒の需要が都心部から郊外へ移ったり、外食控えなどお客様の行動様式も大きく変わりましたね。
またこれはコロナ前からになりますが、お客様の行動する「時間帯」もここ数年で変化があります。今まではランチ・ディナーであったところから、モーニングであったりカフェタイムであったり、お客様が行動する時間帯がバラバラになり、その分お客様が行動する時間も幅を拡げ、飲食を愉しむシーンも多様化しました。
シーンが多様化したことから、メジャーな商品だけでなくマイクロブランドが深く刺さり、個性的な商品も人気を集めるようになりました。このような傾向がコロナの影響もあり、一気に加速したという感じでしょうか。
ーデリバリーもここ数年で一気に加速しました。フードデリバリーの市場の変化はどうでしょうか?
山口:まず人々にデリバリーという選択肢が一般化したことは大きな変化ですね。「今日はデリバリーにしようか。」と想起されることが増えたと思います。
(株式会社SENTOEN代表 山口)
また食のバラエティも増えたと感じます。例えば今までランチといえばお弁当・丼ものだったところから、「これって夜のメニューだよね」というものもいつでもデリバリーで気軽に頼めるようになりました。
武田:リモートワークが増えたことでも食事のシーンは変化していると思います。今サントリーさんとご一緒させていただいている”【おうちで居酒屋】今宵、餃子パーティーを。”でも最初はディナーメインで商品構成を考えていましたが、ランチメニューも追加しました。例えばランチメニューと一緒にアルコールフリー飲料を頼む、というお客様も増えてくるかもしれないですよね。
山口:個人的にはお酒がデリバリー市場を成長させる一つの鍵だと思っています。デリバリー市場の一番の課題は配達料。35%+消費税がUberEatsなどのプラットフォーム手数料で引かれてしまいます。この課題を解決すべく、現在KitchenBASE自社での配達なども始まりつつあるのですが、配達手数料を下げられる要因となるのは単価を上げることです。
しかし一人のお客様が高単価の商品を買うかと言われると、なかなか難しい。そこで料理とお酒を一緒に頼む、という選択肢が増えれば、デリバリー市場はもっと伸び代があるのではないかと思っています。
■【おうちで居酒屋】今宵、餃子パーティーを。とは
ー【おうちで居酒屋】今宵、餃子パーティーを。について教えてください。そもそもなぜ餃子を選ばれたのでしょうか?
宮崎:まずわかりやすいものがいいなと考えました。弊社はお酒の販売にチャレンジする前提でしたので、お酒を連想する商品であること、ただおつまみに寄り過ぎるとニッチになってしまうので、食事のイメージもありつつ、つまみとしてもイメージできるものとして餃子を選びました。
(サントリー株式会社グルメ開発部 宮崎様)
(【おうちで居酒屋】今宵、餃子パーティーを。)
また、実はグルメ開発部では今まで餃子の開発をかなり行なってきたノウハウもありまして。どの餃子がお酒に合うのか、それこそ具を1mm単位で変えたり、皮の厚さを研究したりと知見があったことも、餃子を選んだ理由の一つにはありました。
その中であくまでも「お酒に合う餃子とは?」を考え抜いて選んだのが今回の餃子です。
ー色々なお酒がある中で、今回の餃子ブランドに合うお酒を選んだ理由は何でしょうか?
宮崎:まず極めてわかりやすいものでいこう、というのがありました。そもそもお酒のデリバリーという市場は新しく作り出していく段階なので、まずはお客様にとってわかりやすいものを選びました。
また翠というブランドは今CMでも「居酒屋飯に合う」として訴求しておりコンビニやスーパーでの売上も好調なため、こちらも手にとっていただけるのでは?と思い、翠を入れての4種類から始めました。
武田:弊社内でも「餃子に一番合うお酒はどれ?」と飲み比べをしてみました。もともと餃子に合うものを選んでいただいていることもあり、そこまで偏りはなかったですね。自分の好みやその時の気分によってお選びいただける楽しみもあるかと思います。
ー新しいお酒「ビアボール」もお取り扱いが始まります
宮崎:こちらは炭酸水で割って飲むビールです。元々のアルコール度数は16%あり、おすすめは1(本品):3(ソーダ)の割合です。濃い目や薄め、ご自身の好きな強さでお楽しみいただけます。
山口:「ビールを割る」という新しい発想、とてもいいですね。僕がいつもやってしまうのが、冷蔵庫に入れ忘れてぬるい、ということなんです。でもこれであれば氷を入れて飲むことができますね。割って飲む、ということで色々な楽しみ方ができそうです。
武田:デリバリーだとお一人の方はもちろん、何人かでパーティーセットを頼むこともあるので、そんなシーンにも合いそうですね。
ー餃子ブランドもローンチから様々なアップデートをしています
武田:もともとはおうち居酒屋ということでディナーを意識していましたが、ランチメニューとしてごはんと一緒のメニューを追加したり、逆にもっとお酒を飲みたい方向けに2本目の値段を下げるなど色々なアップデートを行なっています。
(株式会社SENTOEN キッチン運営責任者/ブランド開発 武田)
デリバリーではスピーディーに商品構成や写真も変えることができるので、弊社では事前に複数パターンの写真を用意するなど、とにかく高速でPDCAを回すようにしています。
宮崎:お酒も定番がいいよねと言いつつ、定番であれば隣のコンビニで買えてしまう。デリバリーならではの変わったお酒や高級アルコールをのせるのもいいかもしれないよね、など最近は話しています。
ー今後は何か新しいことを企画していますか?
武田:ビアボールを含め、いくつか新しいお酒がメニューに登場します。またクリスマスプレゼントも兼ねて、ブランドで取り扱っている冷凍餃子のプレゼントキャンペーンなども考えています。まさにパーティーシーズンだと思うので、おうちでぜひ餃子とお酒を楽しんでほしいですね。
■デリバリーとお酒の商品開発の秘密
山口:お酒を作られるときはシーンを前提に考えられるのでしょうか、それとも味を中心に考えるのでしょうか?例えばこのビアボールはどのように生まれたのでしょうか?
宮崎:これはユーザーニーズを起点としてできたものです。コロナ禍でお客様の嗜好の変化があり、自分の好みの濃さや味わいのものを自身のペースで飲みたいというニーズが高まってきました。そこから自分で濃さを決められるビールがあったら面白いのでは、とスタートしたのがこの商品です。
渡邊:酔い方を自分でコントロールしたい、という人も増えていて、そういう意味でも低アルコールとか、自分で調整できるもの、への需要は増えていますね。
ーデリバリーでも商品発売後にお客様の声をもとに改良を重ねていますよね
武田:そうですね。サントリーさんともご一緒させていただいた「NY屋台メシ!!チキンオーバーライス」も様々な感想をもとにアップデートを行いました。例えばNYではパラっとしたお米を使うところを、日本人好みの柔らかい炊き方に変えたり、トッピングもお客様にアンケートをとって人気のものを追加するなど、アップデートを続けました。
デリバリーだと評価がいいのか悪いのかも全てわかりますし、データとして全て表れるので、そこは常に確認して改善を繰り返すようにしています。
渡邊:まさに「ユーザーの声をダイレクトにすぐ聞ける」というのがデリバリーの素晴らしいところだと思います。飲食店だと、たとえば料理を残されたとしてもその真意がわからなかったり、対面だからこそ正直な感想を聞きにくいこともあります。しかしデリバリーだとすぐに正直な評価をもらうことができますよね。それが高速で改善していくことができる理由の一つだなと思います。
飲食店だとメニューを変えるのも何ヶ月後、となってしまうところ、KitchenBASEさんでは翌日変更を反映してくれることに驚きました。
■飲食業界もデータ分析と高速改善が鍵
ーKitchenBASEの強みはまさにデータ分析です
山口:もともと私はIT業界で働いていて、アプリを作っていました。アプリはリリースした次の日からお客様のレビューが発生しますし、ユーザー数やお客様の継続率など全てのデータをとることができます。それを飲食店に置き換えた時、この業界にはそれが足りないのではないかと思ったんです。レビューやデータを見ることで改善するポイントがわかりますよね。
もしかしたらアルコールでも、中身は同じだけどパッケージだけ異なるA・B・Cでどれが一番売れるかなど、テストマーケティング的な使い方ができるかもしれないですね。
渡邊:実際のユーザーを起点としたデータを見ることが可能になれば、商品ヒットの確率も上がっていくかもしれませんね。
宮崎:データということでいうと、御社ではどのフェーズに課題があるか細かく見ていますよね。
武田:そうですね。そもそも看板写真に魅力が足りず店舗をクリックしてもらえないのか、それとも商品構成が悪いのか、など細かく見るようにしています。
渡邊:全てデータに紐づいているので、改善も速いし方向性も正しくなりますよね。
ー今後の展望についてお聞かせください
渡邊:我々の目的はアルコールを売る、飲酒シーンをつくる、ということですので、そのためには様々な売り方や取り組みを行なっていきます。今後もプラットフォーマーやサービサー、プレイヤーの方々など様々な方々と協業しながら新しい飲酒シーンや新しいビジネスをつくっていけたらと思っております。
山口:我々は単なる場所貸しではなく、社会のインフラになることを目指しています。現在弊社では東京・大阪に9施設、全体で200キッチンという状況なので、デリバリーという市場が当たり前になるよう、まずは施設数を増やしたいと思っています。
そのためにもデリバリーという市場の成長が欠かせないので、サントリー様のような魅力的なブランドをお持ちの会社様のお力をお借りして、デリバリーの価値やシーンの提案ができればと思います。
【おうちで居酒屋】今宵、餃子パーティーを。
https://restaurant.kitchenbase.jp/restaurants/takadanobaba-gyozaosake/