「クラウドキッチン」という言葉を耳にするようになり、どうやら経営側にとってメリットが多いようだと感じていらっしゃる方のために、改めて「クラウドキッチン」について解説します。
そもそもどういう意味? といった初歩的な部分から、実際にどういったメリットがあるのかという応用的な部分も含めてご案内します!
クラウドキッチン(ゴーストレストラン)とは?
「クラウドキッチン」とは、客席・イートインスペースを設けずにフードデリバリーをメインに食事を提供するキッチンスペース、およびそうした業態の飲食店のことを指します。ネットで注文して自宅以外の場所から食事が届く様が他のwebサービスの「クラウド」と似ているためこのような名前が付きました。
ある時には「ゴーストレストラン」と呼ばれていたことも。余談ですが北米では「バーチャルレストラン」という呼ばれ方もしていたそうです。
クラウドキッチンが生まれた当初、「実際は実体が無いのでは?」という不安からからかいまじりに使われた呼称ですが、フードデリバリーが当たり前になった今では一般消費者もこの業態を受け入れてくれつつあります。
冷蔵・冷蔵の保存技術革新はすさまじく(たとえば冷凍食品は昔に比べてぐんと美味しくなりましたよね)、味に関しては外食と遜色ないことが認められてきているようです。
なぜいまシェアキッチンが注目されているのか?
Amazonや楽天で買い物をするECはもはやほとんど当たり前になって久しく、Uber Eatsを筆頭にフードデリバリーも沢山の選択肢が消費者の手にあります。
リラックスできる自宅でお馴染みの味や憧れの味を楽しめるフードデリバリーは一つのレジャーの形になり、また非接触という意味でも注目度は上昇を極めています。
お店に足を運んで店員さんに配膳してもらう、という以外の新たな飲食のカタチが広く浸透してきているのです。
また、同時に多くの飲食店も「クラウドキッチン」に注目し、取り組んでいます。クラウドキッチンは、固定費を抑えオペレーションをミニマムにできるモデルです。店舗経営のハードルを下げながら、複数の料理人と調理場を共有できることにメリットを感じる経営者が後を絶ちません。
似ているサービスとの違いは?
ここからは、クラウドキッチンと似ているサービスとの違いについてご紹介します。
ゴーストレストランとの違い
先ほどは「クラウドキッチン」と「ゴーストレストラン」はほぼ同じという表現をしましたが、厳密には少し差異があります。それは「複数のレストランが入居しているかどうか」です。
消費者目線では同じような認識になりますが、経営者としてはこれが大きな違い。ひとつのスペースに複数のレストランが入居している形態が「クラウドキッチン」です。ゴーストキッチンとも呼ばれるレストランが集合する場所がクラウドキッチンだという理解で良いでしょう。
キッチン付きレンタルスペースとの違い
料理動画の撮影のためのキッチンスタジオや、交流会などパーティで使用される会場、飲食付きのセミナー・イベントで利用される施設なども、「キッチン付きのスペース」という意味では似たサービスと言えるかもしれません。
こうした施設を検討される方もいらっしゃるかと思います。パーティー会場やセミナースペースはあくまで「交流の場を提供する」がメインの商材なので、保健所の営業許可は不要です。料理教室も同様に「料理のレクチャーが」が本筋なので飲食店としての申し出は不要。
ひるがえって「クラウドキッチン」を検討されている方は、食事を提供する飲食店としての経営を前提としている人向けのサービス。反対に言えば飲食店としてやっていきたい場合は、上記のような類似サービスではなく、保健所等の定める基準を満たしたうえで「クラウドキッチン」を利用して開業する必要があるでしょう。
クラウドキッチン(ゴーストレストラン)の特徴
初期費用が低い
一般的に飲食店開店に要する初期費用は1,000万円とされています。これに対してクラウドキッチンの初期費用は50万円から150万円が目安。まさに文字通り桁違いの破格の初期費用です。
また、開店の準備期間も一般的な飲食店に比べて短期間なので、すぐに走り出すことができます。
人件費・家賃の削減
前項でお伝えした「初期費用の安さ」の理由を、ここで詳しく解説します。
クラウドキッチンはイートインスペースが無いため家賃・光熱費を節約できるほか、内装費も必要ありません。
また、ミニマムな稼働スペースなので、人件費の節約にもなります。正規雇用だけでなくパートスタッフを採用すれば人件費は抑えられるのではと考える方もいらっしゃるかと思いますが、マニュアルの整備や研修にかかるコストや、採用コストも考えると人件費はないがしろにできない数字になります。特に飲食店は離職率も高いので、人件費の源であるスタッフの数そのものを最小限に抑えられるクラウドキッチンは、固定費を抑えたい経営者にとって大変魅力的な運営業態と言えるでしょう。
新規顧客の開拓
クラウドキッチンの強みのひとつは「新規顧客の開拓」のハードルの低さです。
というのも、クラウドキッチンには通例、ひとつのスペースに様々な飲食店が参加します。当然、コミュニケーションが発生して横のつながりが出来上がっていくことでしょう。土地に根を張って日夜接客をするお店では、形成するのに長い期間を要するコミュニティが割合にスピーディーに生まれます。
このコミュニティを活かして、相互に助け合いながら新規顧客を開拓していく施策を打つお店さんも珍しくありません。
デリバリーアプリによるマーケティングが可能
フードデリバリーを前提とするクラウドキッチンは、当然すべての注文がデリバリーアプリ経由なので、「どのエリアのどんな人が」「いつ」「どんな商品を注文をしたのか」というデータが日々蓄積されていきます。
サービスによっては、購買にまでは至らなかったが興味を示していたという所謂EC業界の「カート落ち」まで観測することができます。
こうしたデータを集め・分析することで商品やサービスを改善しやすくなるほか、欲しい人に欲しい商品を提案するマーケティングにも活用可能です。少し横道にそれますが、たとえば、売上の多寡を見通した戦略的な仕入れができるようになれば、食品のロスや品切れによる機会損失は最小限にまで抑えることができるでしょう。
データと向き合う飲食店経営が簡単になるのが、クラウドキッチンの特徴のひとつ。
ちなみに、弊社のKitchenBASEでは、総売り上げや商品別売り上げといったマーケティングに活用しやすいアナリティクスをご提供しています!
シェアキッチンで開業するのに必要な営業許可は?
クラウドキッチンのようなシェアキッチンで飲食店として開業するには、「食品衛生責任者」の資格が必要です。そのほか、各保健所の指定する条件を満たす必要があります。
販路となるフードデリバリーサービスの利用には特別な許可は必要ありませんが、アカウントを開設して実際に販売ができるようになるまで数週間程度の審査期間などが設けられることに注意してください。
そのほかに必要な前準備は開業初期費用ですが、さきにも触れた通り、開業は最大300万円ほどで手が届きます。また既に完成された「キッチン」をレンタルするので、調理設備の初期投資もグンと抑えられることでしょう。
まとめ
「クラウドキッチン」に関する基本的な知識・情報についてお伝えしてきました。
あらためてクラウドキッチンの特徴を挙げると3点。
・フードデリバリーを前提としたミニマムな調理スペース
・複数のレストランが入居しており、横のつながりもできやすい
・初期費用や運営経費は一般的なレストランよりも低い
フードデリバリーが飲食店の副業ではなく、むしろフードデリバリーの業態が本業と掲げる飲食店も今後増えてくる傾向にありそうです。
設備投資や前準備が手軽なクラウドキッチンに、今後も注目です!