人は見た目が9割、話し方が9割、などと言われ関連する研究も進んでいますが、これは飲食においても同様。飲食店経営においてイメージは非常に重要な要素です。
飲食店のイメージ戦略において特に大切だといわれるのが「シズル感」。シズル感とは食べもののおいしさを伝える視覚的・聴覚的な演出を指す言葉です。
本記事では、そもそも「シズル感」とは?シズル感を上手く表現するには?というテーマで解説していきます。デザインにおけるシズル感の意味や語源、写真を撮影する際のポイントなどにも触れていきますので、ぜひ参考にしてください。
【死語?】シズル感とは
シズル感の意味
「シズル感」とは、食べもののおいしさを伝える視覚的・聴覚的な演出のことです。
購買意欲を掻き立てるよう、いかに五感に訴えかけられるかの度合いを意味し、広告業界や印刷業界で使われます。
たとえばオリジナルの語源とされているお肉のジュージューと焼ける音は、食べる前に聞く音。つまり商品を注文するよりも前に耳に飛び込んでくる音です。
この「音」が「食べたい!」「買いたい!」という気持ちを刺激して、消費者を集客するという理屈です。
聴覚だけではありません。これでもかと伸びるチーズの画は目から食欲を刺激しますし、焼きそばと言えば「そば」ではなく「ソース」の匂いでしょう。
直接的な知覚にタッチせずとも言葉でも「シズル感」は演出できます。「じっくりコトコト煮込んだスープ」「シャキシャキ触感の水菜のサラダ」などという言葉をメニュー名や商品説明に取り入れることによって、購買意欲ーーひいては売上ーーは変わってくることでしょう。
シズル感の語源
シズル感という言葉の語源は英語の【sizzel】です。
この単語は肉を焼く時の「ジュージュー」という音を表す擬音語で、そこから転じて「見ている人の感覚を刺激するものや演出」を指すようになりました。
アメリカ人の営業コンサルタント・エルマー・ホイラー氏が著書『ホイラーの法則」の第1条「ステーキを売るな、シズルを売れ』で発案されたもので、ステーキの焼ける様子を五感に訴えると注文が増えるとされています。
シズル感の言い換え
シズル感という言葉は下記のように言い換えることができます。
- おいしそう
- みずみずしい
- 食欲がわく
- モチモチ
- 濃厚
- とろ〜り
- ふわとろ
- サクサク
- リッチな
シズル感は食欲や購買力を誘う言葉や演出のことなので、おいしそうな印象を与える形容詞やオノマトペはだいたいシズル感と置き換えることができます。
シズル感という言葉の使い方
- この写真のシズル感は素晴らしいですね
- シズル感を出すポイントは光とアングルです
- もう少し水を滴らせた方がシズル感が出るかもしれません
臨場感を五感で演出しシズル感のあ写真を撮影する方法

ここでは主に「写真でのシズル感の演出方法」についてご紹介します。
大切なのは「臨場感」を伝えること。そのためには「五感」で感じ取れる情報をいかに表現できるかどうかが鍵となります。
味覚・食感でシズル感を演出する
飲食店にとって何よりも伝えたいのが「味」ですが、広告をしている時点では残念ながらまだ味を伝えることはできません。しかし味を想像する情報を伝えることは可能です。
コツは5W1H型で考えること。「フランスで修行したシェフが」(who, where)、「原産トマトを3時間煮込んだスープ」(what, how, when) などのように、その料理が何で構成されており、どのように調理されているか? を分解して考えることが魅力的な商品ビジュアルやコピーを生み出す第一歩になりそうです。
また、「あたたかい」「つめたい」といった温度も重要なシズル感のひとつ。たとえば自動販売機は「あたたかい」ではなく「あったか~い」と表記することで、暖かいドリンクを購入した後の「一息」を想起させています。
嗅覚でシズル感を演出する
その匂いを連想させるアイテムを写真内に配置するのは一つの手段です。たとえば、スパイスカレーであればそれぞれのスパイスは溶け込んで目には見えないので、ホールスパイスの素材の写真をカレーの横に添えるーーといった具合です。
また、店舗を設計する時点で「嗅覚による集客」を意識できれば申し分ありません。
不快感を与えないことは大前提になりますが、調理の段階で発生する「美味しそうな匂い」が排気されるダクトを人通りの多い場所に配置すれば、自ずとその香りがお客さんを呼んで来てくれることでしょう。
聴覚でシズル感を演出する
聴覚からシズル感を引き出すのに有効なのは、お察しの通り音声や動画です。たとえばSNSで揚げ物メニューを宣伝するとき、美味しそうな画像をシェアするのも良いですが、揚げている時の動画を音付きでシェアしてみる選択肢も忘れてはいけません。
高温でカラっと揚げたばかりのトンカツをフライヤーからとり出して、包丁で切り分けた瞬間に「サクッ」と心地の良い音がーー。味を知らずとも「食べたい」と思ってもらえるはずです。
もちろん揚げ物でなくとも、同様の手法で「聴覚」に訴えることは非常に有効です。
動画となると腰が重くなるかもしれません。そんな人にもオススメなのが「オノマトペ」の活用です。
オノマトペとは、擬音語や擬態語のこと。先ほどのトンカツの例で言えば「カラっと」「サクッと」などの言葉がオノマトペに相当します。少しの工夫で誰にでもできるお手軽な方法と言えるでしょう。
視覚でシズル感を演出する
美味しそうな写真を撮りましょう。しかし言うは易し、行うは難し。意外に難しいのがメニュー撮影です。
スマホでも簡単に実践できる具体的な方法として提案したいのは、「明るさ」と「色温度」です。なるべく明るい場所で撮影し、暗い場合は画像編集で明るく見せてあげましょう。色温度も同様に後からの画像編集で処理。
青や紫、黒などの「寒色系の色」は食欲が減退する色だと言われています。これを逆手にとって「白米を青く着色する」というダイエット方法もあるくらいです。真っ青な白米……あまり食べたくはありませんよね。
ですので、メニューの写真は「暖色系」で見せることをおすすめします。「色温度」を編集で上げると簡単に暖色が強調できます。スマホでも手軽に編集できるので、やったことが無いという人は是非試してみてください。
ちなみに余談ですが、外食最大手のマクドナルドのロゴはご存知の通り赤と黄色の鮮やかな組み合わせ。やはり暖色です。
触覚でシズル感を演出する
もしあなたのお店に食感を大事にしているメニューがあるとすれば、その商品の最大のアピールポイントはやはり触覚。
たとえばピクルスの目が覚めるようなコリコリ感や空気よりも軽いパンの柔らかさを、できる限り伝えられるよう工夫して写真や動画、商品説明文などに落とし込みましょう。
たとえば野菜の新鮮さを想起してもらうために、水の滴る生野菜の写真素材をメニュー写真に添えるなど、触覚をイメージできるものを料理の近くに配置するという方法もあります。
シズル感の具体例
ここでは、シズル感を表現できる具体的な演出を紹介します。
みずみずしい野菜
野菜に水滴をかけると、野菜のみずみずしさを表現することができます。特にトマトやきゅうりなど、水分を含んだ野菜と相性抜群。また、野菜が水に沈む瞬間を撮影するのも効果的です。撮影する際は、シャッタースピードを速く設定しましょう。
とろける半熟卵
卵がとろりと溶けた瞬間は、見ている人の食欲をそそります。色味が偏りがちな料理に卵を入れるとより色鮮やかになります。できるかぎり新鮮な卵を使うようにして、撮影する際は自然光の光を卵に反射させるとよいでしょう。
ぐつぐつと煮立つ鍋
ぐつぐつと煮立つ鍋もシズル感の一つです。出汁が沸騰して鍋のふちに泡が出始めた瞬間を狙って撮影しましょう。煮込まれた具だと見た目が損なわれてしまいますので、具が煮える前の状態で撮影を行いましょう。
撮影や画像加工にシズル感を取り入れるときの注意点
シズル感を出すことは消費者の五感に強く訴えるために非常に重要ですが、やり過ぎると逆効果になってしまったり、消費者が離れてしまったりする可能性があります。
ここでは、撮影や画像加工にシズル感を取り入れるときの注意点を3つみていきましょう。
誇張や誤解を招く演出は避ける
シズル感を出すときは、実際の商品を誇張するのは控えましょう。実際に入っていない具を写すのはもちろんのこと、実物よりも大きく見せようとしたり、実物とかけ離れた色味を足したりしてはいけません。
誤解を招くようなシズル感を演出してしまうと、消費者の信頼を損なってしまいます。あくまでもリアルに基づいて、おいしさを引き出す意識でシズル感を出しましょう。
食品に合ったシズル感を選ぶ
食品に合ったシズル感を選ぶことは非常に大切です。たとえばアイスクリームやかき氷のような冷たい食べ物に湯気を加えると消費者に違和感を与えてしまいます。野菜に水滴をかけると美味しそうにみえますが、揚げ物に水滴をかけると衣が湿って見えてしまいます。シズル感を出すときは、食品の特性をしっかり反映するようにしましょう。
文化や市場の背景を理解する
シズル感を演出する際には、文化や市場の背景を考慮しましょう。消費者がどのような刺激を受けるのか、何に惹かれるのかは国や地域、世代によって異なります。たとえば日本では湯気やとろける卵などが好まれますが、海外で同じことをすると過剰な演出だという印象を与えかねません。
シズル感に関するよくある質問
ビジネスにおけるシズル感とは?
ビジネスの現場では、商品やサービスの魅力を視覚・聴覚・感覚的に伝え、消費者の興味や購買意欲を引き出す演出力のことをシズル感と呼びます。食べ物だけでなく、座り心地の良い椅子やエンジン音が魅力的な車など、さまざまなシーンで使用されます。
デザインにおけるシズル感とは?
デザインにおけるシズル感とは、見る人の感覚や感情に直接訴え、魅力や価値を直感的に伝える演出力のことです。音、動き、温度感などもデザインで表現することで、単なる見た目以上の体験価値を伝えたり、光の反射、質感、色彩、素材感などを巧みに表現して、対象物の存在感や触感を想像させたりすることで、シズル感を出すことができます。
印刷業におけるシズル感とは?
印刷業界では、色校正時などにシズル感という用語を用います。印刷の具合で魅力的な商品に見えるかどうか、という演出を指す言葉です。
シズル感が死語と言われているのはなぜですか?
シズル感という言葉は一昔前に使われていた言葉で、世代によっては「古い」と感じることがあるようです。また、以前は食品を美味しそうに見せることが、購買力を促す方法として主流でしたが、現代はSNSの流行により体験やストーリーを通して食品の魅力を伝える方法に変化しています。そういった経緯もあり、シズル感という言葉だけでなく、概念自体が古くなっている可能性があります。
シズル感が気持ち悪いと言われている理由はなんですか?
シズル感を演出した広告の中には演出が過剰なものもあり、見ている人に不快感を与えてしまうことがあるためです。また、人間の脳は不自然に加工されたものを拒否する傾向にあるため、過剰なシズル感を受け入れないことがあります。
まとめ
今回は「シズル感」の演出の方法やその考え方についてお伝えしてきました。
「魅力的に売り込め!」と言われると思わず怯んでしまいそうですが、具体的にやることはどれも些細な工夫ばかり。少しの工夫でお客さんに与える印象が大きく変わります。
自分でお店を宣伝することのあるひと・その予定のある人は、この「シズル感」をどこか心の片隅にとどめておいていただければと思います!
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