レストラン経営の難易度は高い
起業を考える人にとって参入障壁が低いレストラン経営。
開業時の融資が充実していたり、街の至るところに飲食店がある光景を見ると、自分でも挑戦できるのではないかという挑戦心が搔き立てられますよね。
しかし飲食店経営は人気な分、開業準備から集客面で難易度が高い分野でもあります。
東京商工リサーチによると、2020年(1月~12月22日)の飲食店倒産件数は、累計810件。新型コロナの感染抑制のための休業や時短要請の影響により、過去最多となっています。
■参照:東京商工リサーチによる集計
本記事では、苦戦を強いられる飲食業界で、生き残る実店舗を経営するために知っておきたい、レストラン経営が難しい理由と、必要なノウハウを深堀していきます。
レストラン経営が難しい理由
理由①:初期費用、運用コストが高い
レストラン経営が難しいとされる大きな理由が、膨大な開業費用と運用コストがかかることです。飲食店は営業を続けるだけでも大きなコストがかかるため、利益率が低くなることが特徴です。
実店舗を持つ場合、開業資金は平均1000万円~1500万円必要だといわれます。
開業資金にはテナント賃借費用の他、内装工事費、機械・什器・備品にかかる費用、オープン後半年の運転費用などが含まれます。
また、レストランは、開業から店舗が軌道に乗るまで通常半年間かかるといわれています。家賃、食材費、従業員の給与、減価償却費など多くの運用コストが必要なことからも、軌道に乗った状態をキープし続けることが求められます。
費用を抑えたい場合は、間借り営業や、実店舗を持たないデリバリー専門店「ゴーストレストラン」、クラウドキッチンなどで開業するという手法もおすすめです。
こちらの記事もご参考ください。
▶︎「飲食店の開業資金はいくら必要?その他必要手続きもまとめて紹介」
▶︎「ゴーストレストランの開業には何が必要? 飲食店営業許可、開業資金、資格など」
理由②:競合が多い
レストラン経営には競合が多いことも経営が難しいとされる理由のひとつです。
今はコンビニやスーパーで本格的なチルド商品やインスタント食品、飲料が買えてしまう時代です。個人経営のカレー屋を開く場合、競合となるのは他のカレー屋や同業態であるチェーンの飲食店の他に、コンビニやスーパーまで競合と見なす必要があります。
また、顧客がラーメン屋を訪れる動機が「ひとりで気楽に食事をとる」ことであった場合は、ラーメン屋に限らずあらゆるジャンルの飲食店が競合となります。
本格的な開業準備の前に、まずは出店したい立地でどのような業態の店舗があるのか、念入りに調査を行いましょう。
理由③:薄利多売である
レストラン経営は、非常に薄利多売なビジネスです。
食材の原価だけを考えれば、大きな粗利が取れるため魅力的に感じる方が多い飲食店ですが、実店舗でひとつのメニューを提供するまでには光熱費や家賃、人件費などのランニングコストがかかります。
「安くて、うまい」が求められる風潮にある中、どれだけ売っても最終的に手元に残る利益が少ないのであれば、営業利益率が下がり儲けが出ないということになってしまうのです。
また、実店舗では座席数が決まっているため、一日中ひっきりなしに顧客が訪れたとしても売上や利益に天井があることから、どうしても薄利になるという難しさがあります。
理由④:長時間労働になる
ランニングコストがかかるレストラン経営では、売上を上げるために、人件費を抑えようという考えから、必然的に一人ひとりが長時間労働になる傾向があります。
特にランチからディナーまで営業することが多いレストランでは、午前中の開店準備からディナー後には翌日の仕込みを行う必要があり、朝から夜まで働き詰めになってしまうことも。生活リズムが崩れたり、家族がいると、家族との時間をうまくとることができないことで飲食店といえば”ブラック”という印象を持たれます。
そのイメージから人材を集めにくい中で、自身のプライベート時間の確保や、労働基準法を守りながら社員に適切な給与を支払える状況を保つことは他の業界に比べて難しいのが現状です。
レストラン経営を成功させるためのノウハウ
これまでご説明した飲食店開業が難しい理由を考えると、開業してやっていけるか不安になられる方もいるでしょう。しかし、コロナ禍でも成功している飲食店も存在します。
それらの店舗に共通するポイントは”開店前の入念な準備”と”経営のノウハウを持っているか”です。
ここからは飲食店を成功させるために備えておきたいことを解説します。
開店前に必要なノウハウ
- レストランのコンセプトを決める
開業準備でまず初めに大切なのが店舗の「コンセプト」を明確にすることです。飲食店のコンセプトとはお店のテーマであり、立地や内装、メニュー、接客など店舗づくり全体の骨子となるものです。
コンセプトは5W1H(何を・誰に・いつ・どこで・いくらで・どのように)に沿ってできるだけ具体的に考え、最終的にすべての項目で整合性がとれているかを確認することが重要です。自分が出店したいお店と顧客のニーズにズレがあると、ターゲットの来店は見込めません。ターゲットの需要を把握し、コンセプトに沿った店舗づくりを大切にしましょう。
コンセプトのつくり方については、こちらの記事もご参考ください。
▶︎「流行るお店の理由とは 繁盛している飲食店の特徴から考える」 - 立地を決める
「レストランのコンセプトに合う立地選び」も成功を左右する要因です。飲食店は人通りの多さや交通の便が良い場所だと成功するとは限りません。お客様はSNS上の写真や口コミの雰囲気で行きたいお店を決めることも多い時代です。静かに美味しい料理を楽しみたい顧客が訪れる「海辺の一軒家レストラン」など、店舗とお客様のニーズがマッチしている場所ならば、人通りに左右されることなく遠くからでも訪れてもらうことができるでしょう。
立地を決める前にはコンセプトを立案する際に、
・ターゲットを絞り、どこに集中しているのかを分析すること
・どんなジャンルの飲食店を、どのような利用動機でご利用いただくのかを明確にすることこれらを重視し、お店の雰囲気に合う立地を選びましょう。
また、交通の便を考慮することも大切です。都市部なら、駅から徒歩10分以内か。地方や郊外なら、駐車場はあるかなどを確認して立地を決めることが、顧客満足につながります。
- 事業計画書の制作
開業資金を調達するためには、事業計画書が必要です。この事業計画書は、内容の質によって調達できる資金が変わってくることがポイントです。なぜなら事業計画書はレストラン経営の実現可能性と、将来性を示すものだからです。必要な資金を調達するには、
・経営者の経歴や実績、個人の信用情報
・レストランのコンセプトの詳細
・成功する根拠となるお金の流れこれらをしっかり書くことで事業計画書の質を高め、審査の担当者から信頼を勝ち取ることが大切です。
日本政策金融公庫の借入申込書や創業計画書のテンプレートはこちらで入手可能です。
▶︎借入申込書等ダウンロード事業計画の策定については、こちらの記事をご参考ください。
▶︎「飲食店開業までのスケジュール・流れを徹底解剖!」
開店後に必要なノウハウ
①経理に対する知見
レストランを経営していると、売上の記帳や、人件費・食材費・減価償却費などの経費の管理などさまざまな経理業務をこなすスキルが必要です。
経理業務で特に意識しておきたい経営指標が「FL比率」と「売上高営業利益率」です。
■FL比率
FL比率とは、FLコスト(Food=食材費、Labor=人件費を足した費用を売上高で割ったもの)を指します。FL比率は、店舗が儲かっているかを判断する指標であり、売上目標を決める際の目安としても活用することができます。
一般的な目安は50%で、目安を上まった場合は店舗の利益率が低いということになります。
常に50%以内を目指して、経営改善を行いましょう。
■売上高営業利益率
売上高営業利益率とは、売上高に占める営業利益の割合のことをいいます。レストラン経営では、売上高が高くても営業利益が低ければ儲けが出ていないことになります。
営業利益とは売上高から原価と販管費(人件費・広告宣伝費)を差し引いた金額です。「本業で稼いだ利益」ともいわれ、営業利益が大きい場合は本業がうまくいっていることを意味します。
つまり、売上高営業利益率を出すことによって、売上高のうちどの程度が営業利益として手元に残るかを判断することができます。
【計算式】
売上高営業利益率(%) = 営業利益 ÷ 売上高 × 100
中小企業庁によると、令和元年の飲食業の売上高営業利益率の平均は5.19%です。
こまめに数値の分析を行い、メニューやサービスの改善や経費の見直しを行いましょう。
②人事に関する知見
飲食店経営では、人材を採用し、育成するスキルも求められます。
アルバイトから、経験のある優秀なシェフまで、店舗にぴったりなスタッフを採用できることが、従業員満足度につながり、店舗のパフォーマンス向上につながります。
応募の動機やバックグラウンドが様々な求職者とのミスマッチをなくすには、「何のために、どんな人を採用したいか」という採用基準をはっきりさせることが大切です。
求める人物像が決まったら、勤務する店舗ならではの情報を根拠とともに、わかりやすく・詳細に伝えましょう。求人を出す際にはチラシやwebの求人サービスなどから、店舗にとってどのサービスの利用が適切かを見極める力も重要です。
店舗開業のきっかけや、お店のコンセプトとなるメニューやサービス、スタッフ間の関わり方など、働いている姿がイメージできる情報を提供すること。また、休みや残業の有無など労働環境について詳しく伝えることも求められます。
③マーケティングに関する知見
お洒落な雰囲気のお店で、どんなに一流の料理があっても顧客に認知をしてもらえて、リピートしてもらわなければ繁盛させることができません。そのために必要なのがマーケティングに関する知見です。
今の時代、WEBサービスやSNSの普及により多くのお客様は事前に価格や利用シーンなど様々な要素で競合店と比較をした上で店舗へ訪れます。店舗の強みを明確に打ち出し、飲食店予約サービスや店舗のウェブサイト、SNSを通して認知してもらうことが欠かせません。
主な施策として、新規のお客様獲得に便利なツールが「ホットペッパーグルメ」や「ぐるなび」です。写真やお客様からの口コミでお店の雰囲気やウリを伝えることができるツールですが、多くの利用者は初回来店時のクーポンを目当てにした方や、予約を目的にしたお客様です。
再度来店してもらうためには、お客様に満足してもらえるようなサービスの提供に力を入れることがカギとなります。
新規のお客様をリピートにつなげるには、欲求やニーズを満たすことができる価値(商品・サービス・時間)を創出することが求められます。
まずは、
・来店して欲しいお客様が求めるものは何か
・来店・注文した後にお客様がどのような気持ちになるのか
を意識した商品づくりと、時間と空間の演出を考えましょう。
また、新規顧客獲得から、リピート客獲得まで大きく役立つのがSNS(Facebook、Twitter、Instagram)の活用です。
SNSへの投稿は創業ストーリーやメニューの売りなどの情報を発信したり、お店の世界観やコンセプトをしっかり伝えることで、ターゲットにしたいお客様を集客しやすい手法です。
SNSでファンを獲得できると、店舗のページからのみならず「素敵な店舗をシェアしたい」と思っていただけたお客様の投稿から新たな顧客を呼ぶことができます。
リスクを抑えて経営するには実店舗を持たないクラウドキッチンの入居がおすすめ
本記事でご紹介したように、レストラン経営は初期費用や運用コストが高いこと、人件費がかかること、売れる量に限りがあることなど様々な困難があります。
リスクを抑えて開業したいという方には、実店舗を持つという概念をなくし、デリバリー専門店を検討することも飲食店経営の手段としておすすめです。
クラウドキッチン施設キッチンベースに入居する場合、
・物件取得費がかからず、設備も整っているため初期費用を抑えて開業できる
・独自のデータ分析に基づいたマーケティング支援を得ることができる
・決められた席数がなく、接客を行わないため少数精鋭で多くの数を売ることができる
など、様々なメリットがあります。「コロナ禍でもレストラン経営をはじめたい」「店舗を持つ前にテスト営業をしたい」という方はぜひご検討ください。
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クラウドキッチンとは、オンラインで注文を受けるデリバリー専用のキッチンです。KitchenBASEでは1つの空間を区画で分けて複数の店舗でキッチンをシェアするため、クラウドキッチンと呼んでいます。
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