飲食店を開業には必要な資格は食品衛生責任者と防火管理者
飲食店を経営するには、食品衛生責任者と防災管理者という2つの資格取得が必須です。名前だけ聞くと、取得に時間がかかるのでは?とハードルを高く感じる方もいるのではないでしょうか。
実はこれらの資格は、1日の講習を受ければ誰でも比較的簡単に取得できるものなんです。最低限、この2つがあればカフェや居酒屋、レストランなどジャンルを問わず経営を始めることができます。
本記事では、2つの資格の取得方法や、その他開店までに必要な届出についてまとめます。
食品衛生責任者は必ず必要
飲食店を開業するには、食中毒や食品衛生上の管理運営を担う「食品衛生責任者」を1名選任する必要があります。
これは飲食店に限らずスーパー、コンビニなどの「食品を製造・提供するお店」では必ず取得しなければならない資格です。
資格を持っていない場合には、「食品衛生責任者養成講習会」の受講が義務づけられています。
1日程度の講座後に実施される試験に合格すると、修了書が交付されます。
この修了書は営業許可を申請する際に、営業許可書と一緒に保険所に提出する必要があるため、あらかじめ予定を組んで受講しておくようにしましょう。
講習は特に予備知識なども必要なく、誰でも比較的簡単に習得できる内容です。
■講習内容(約6時間)
・衛生法規 2時間
・公衆衛生学 1時間
・食品衛生学 3時間(テスト含む)
■開催日
毎月、各所にて8会場~10会場程度開催(東京都の場合)
■受講料
教材費含め、10,000円(2021年6月1日より、12,000円に改定)
講習は、各都道府県の食品衛生協会の主催で行われています。
日程や事前申し込みについては、各協会のホームページをご確認ください。
また、以下のような資格をお持ちの方は、講習会を受ける必要はありません。
・栄養士 |
保持している資格が受講免除の対象になるか分からない場合や、講習会の詳細は各地の保健所にお問い合わせください。
こちらの記事で営業許可について深堀しています!
▶︎「飲食店の開業に必須な保健所の営業許可を取るためのポイント」
防火管理者が必要になる場合もある
食品衛生責任者に加え、お店に30人以上収容できる比較的大きな店舗では、防火管理者の資格取得が必要です。
そして30人以上収容できる場合、取得する資格は店舗の延床面積によって2つに分類されます。
延床面積が300平米以上・・・「甲種防火管理者」
300平米未満・・・「乙種防火管理者」
防災管理者の資格は、カウンターだけの飲食店、ゴーストレストラン、クラウドキッチンで開業をする場合、席数が必要ないため取得する必要はありません。
防火管理者になるには甲種・乙種ともに講習会を受講し、資格取得後は営業開始日までに各地の消防署に届け出をする必要があります。
講座は日本防火・防災協会、都道府県知事、市町村の消防署のいずれかの主催で行われ、実施機関によって講習内容と受講申込方法、受講料などが異なります。
市町村によって内容に差はありますが、講習修了資格は全国共通です。
■講習内容
「甲種新規講習」(2日間、約10時間)
・防火管理の意義及び制度
・火気管理、施設・設備の維持管理
・防火管理に係る訓練及び教育
・防火管理に係る消防計画など
※甲種防災管理者のうち、収容人員300人以上の建物を扱う場合は5年ごとに「甲種防火管理再講習」を受講しなければなりません。受講の対象となるかどうかは、所轄の消防庁にお問い合わせください。
「甲種防火管理再講習」(半日、約2時間)
・最近の法令改正の概要
・火災事例研究
「乙種防火管理講習」(1日、約5時間)
・基礎的な知識及び技能
■日程
各自治体での開催日時については”日本防火・防災協会ホームページ”で調べることが可能です。
また、東京消防庁が主催する東京都の講習を受ける場合は、”こちら”で日時と空席状況を確認できます。
定員に達するのが早い地域もあるので、営業開始日までに余裕を持って予定を組んでおきましょう。
■受講料
受講料には、教材費や、修了証が含まれます。
費用は講習の主催元によって異なりますが、以下の金額が基準になります。
甲種=8,000円、乙種7,000円、甲種再講習=7,000円
※ 防火・防災協会で受講する場合
調理師免許は不要
飲食店を開くというと、調理師免許の取得を考える方が多くみられますが、実は調理師免許を持たなくても、誰でも料理人として調理をすることができるんです。
調理師免許には、お店の信頼度アップに繋がるというメリットがあるため、料理の知識や実力の証明として使いたい、また調理師として腕を磨きたいという方へ取得をおすすめします。
営業形態によって必要な書類もある
法人として開業をする場合の書類を届出先別にご紹介します。
飲食店を開業するには、開業届の他にも税務署等に対して、多くの書類提出が必要です。一つひとつ確実にクリアしていきましょう。
届け先 |
書類名 |
提出期間 |
概要 |
管轄の税務署 |
法人届申告書 |
設立後1ヶ月以内 |
法人税のために届け出る開業届 |
都道府県管轄税務署、市区町村村役場 |
設立後1ヶ月以内 |
地方税のために届け出る開業届 | |
管轄の税務署 |
青色申告承認申請書 |
開業後3ヶ月以内または開業してからその年の年末までの第1期終了日 |
青色申告を行うことについて、承認を受けるための申請書 |
管轄の税務署 |
給与支払事務所等の開設届出書 |
従業員を雇用した場合、雇用してから1ヶ月以内 |
従業員へ給料の支払いを行うことを税務署に知らせ、源泉所得税の納付書を送付してもらうための届け出 |
管轄の税務署 |
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 |
適用を受ける時 |
給与から天引きした源泉所得税の納付を年2回まとめて行うために提出する書類(原則は毎月支払い) |
管轄の保健所 |
飲食店営業許可 |
店舗完成の10日前まで |
衛生上提出する書類。申請書、店内レイアウト図、食品衛生責任者の資格証明書、申請料が必要 |
管轄の消防署 |
消防管理者選任届 |
営業開始まで |
収容人数が30人を超える場合、提出が必要 |
防火対象設備使用許可届 |
7日間以内 |
建物やその一部を新たに改修する場合に必要な書類。内装業者が届ける場合が多い | |
火を使用する設備などの設置届 |
設備設置前 |
消防署が必要な防火措置が講じてあるかを確認するための書類 | |
労働基準監督署 |
労災保険加入手続き |
雇用した日の翌日から10日以内 |
従業員を雇うにあたり、正社員ではなくアルバイトであっても提出が必要 |
公共職業安定所 |
雇用保険の加入手続き |
雇用した日の翌日から10日以内 |
従業員の「1週間の労働時間が20時間以上」かつ「31日以上継続して雇用する」場合に必要 |
社会保険事務所 |
社会保険加入手続き |
期限なし。開業後すぐ提出すること |
従業員を雇用する場合に必ず提出が求められる手続き |
■その他、営業内容によって必要な書類
深夜酒類提供飲食店営業開始届出書
深夜12以降、お酒を提供する場合に提出する書類です。営業開始の10日前までに管轄の警察署へ提出が必要です。
風俗営業許可申請
お客に接待を行う場合、営業開始の2ヶ月前までに管轄の警察署へ提出する必要があります。
菓子製造許可
製造したケーキやパンなどのお菓子をテイクアウトの形で販売する場合、保健所に「菓子製造業許可」の提出が必要です。店内で料理を提供するだけであれば提出の必要はありません。
酒類販売業免許
飲食店でお酒を提供するだけではなく、酒類を店舗で販売する場合には管轄の税務署への届け出が必要です。
開業までに必要な資金はどれくらい
資格取得の前に準備しておきたい開業資金。
一般的に飲食店の開業には平均1000万円~1500万円かかるといわれます。
■内訳
内外装工事 368万円
機械・什器・備品等 186万円
運転資金 169万円
テナント賃借費用 155万円
合計 883万円
これは10坪〜15坪の個人経営の小規模店で、お店を運営・維持していくための運転資金まで含めて考えたケースです。
■出典:日本政策金融公庫 創業の手引き
できるだけ低予算で開業したいという場合、近年増えている「居抜き」物件を借りるのも一つの手です。
前入居施設の内装や設備を譲り受けることができるため、出店コストやその後のランニングコストを抑えることができます。
コロナ禍での飲食店開業のメリット・デメリットは
新型コロナの影響で、飲食業界では苦しい状況が続くことが予想されます。
この状況下であえて飲食店を開業するメリットとデメリット、お店を成功させるためのポイントを解説します。
飲食店開業のメリットとポイント
- コロナに配慮した店舗設計ができる
外食時に人の密集を避けたお店選びが重要視される今、ソーシャルディスタンスを考慮した空間設計や、テラス席の設置などの工夫をすることで既存の店舗よりも集客を見込める可能性があります。 - ゴーストレストランの開業で、デリバリー需要を取り込む
コロナ以前から、右肩上がりに伸びていたデリバリー市場。新型コロナの流行で外食しづらくなっている今、その需要はグッと上昇しています。
デリバリー専門店であるゴーストレストランは、コロナ禍によって注目されたビジネスではありますが、これから今以上に拡大されることが見込まれます。家賃や人件費などの固定費を抑えながら、新たな飲食ビジネスを経験するにはもってこいの開業方法です。
より資金を抑えて開業する方法には、コロナの影響で閉店する飲食店が相次ぐ中で増加している「居抜き物件」のレンタルサービスや、ゴーストレストランに特化した施設「クラウドキッチン」などのサービスがあります。
- 補助金・助成金を活用する
開業資金を調達する際に、国からの補助金を受けることができます。
集客に工夫が求められるコロナ禍においても活用できる、補助金・助成金をいくつかご紹介します。
■創業補助金開業する個人や中小企業に対し、中小企業庁により最大200万円の補助を受けられる制度です。開業資金2/3の補助を受けることができるため、飲食店を開店する場合満額の200万円を受け取れる可能性があります。ただし、利益に応じて補助金を返還する義務があることにことにご注意ください。
■新・ものづくり補助金
「革新的」な取り組みにチャレンジする個人や中小企業に対して中小企業庁が支援を行う制度です。新商品や新サービス開発にかかる経費について、一般的には1,000万円、最大で1億円の支援を受けることができます。基本的には設備投資費になるため、人件費や販促費用は含まれません。
■IT導入補助金
業務効率化など生産性向上に関わるITツールを導入する場合、経費の一部の補助を受けられる制度です。飲食店の場合オーダー端末やPOSレジやなどの導入に活用することができます。補助額はA型・B型に分類され、A類型40万~150万円未満、B類型150万~450万円の支援が見込まれます。
◼️中小企業等再構築促進補助金
中小企業が事業再構築を目的として企業の業態変換を行う場合、支援を受けられる制度です。最大で1億円の資金補助を受けることができます。
新型コロナの流行を機に、飲食店の店舗をクラウドキッチンやゴーストキッチンに転換させたい、ECサイトに力を入れたいという場合に有効です。
飲食店開業のデメリットとリスク
- 短期間でのデリバリー店舗経営
既存の飲食店でのデリバリーの導入や、ゴーストレストランを始める上で避けておきたいのが、「コロナが終息したら撤退しよう」という考え方です。
コロナ禍でデリバリー市場が盛り上がっている背景には、顧客の数が伸びてると同時に、デリバリーに参入する飲食店の数も増加している状況があります。ですが、1店舗あたりのオーダー数はこのまま横ばいなのでは?と感じて、短期間でデリバリーをやめてしまうのは非常にもったいないことです。
なぜならコロナがひと段落しても、リモートワークや自宅での飲食の楽しみや便利さを一度経験した人々は、今後もwithコロナのライフスタイルを続けていくと考えられるからです。
食べる需要は一定な分、供給する店舗は減っていくとすると、一店舗あたりのオーダー数はぐっと伸びることになります。デリバリー営業のうまみはコロナ終息後にやってくると考え、長期的な営業を検討することをおすすめします。
感染防止策など衛生面での対策が難しい
コロナ禍での飲食店営業には、感染予防に配慮した店舗の設計や、店内の換気扇や空気清浄機、アルコール消毒液など感染症対策への配慮が必要です。感染症対策のための設備やグッズの導入にはコストがかかる上、ソーシャルディスタンスを意識して席数を減らす場合には客数の減少にもつながります。
また、これはコロナ禍であるかないかに関わらず大切なことですが、感染症にシビアな今の状況だからこそ、食中毒などの衛生管理をより徹底する必要があります。
感染症がいつどのような状況で発生するか分からないというリスクがあり、対策は難しいところですが、飲食店を開業する際には、食品衛生責任者の資格を取得する、感染症対策をしている旨をPRするなど、よりいっそうの配慮を心がけましょう。
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